推しがいなくなった日
なるべく早めに、書かなくては。
と、誰に対しての義務感でもなく思っていた。
好きなアイドルについて書くのなら、なおさら。
君のことだよ、キム・ジョンヒョン。
いつから好きだった、とか。
どれくらい好きだった、なんてことを書こうかと思ったけれど、
それもなにか違うかな、と思った。
去年の12月18日、韓国出身のアイドルが自殺した。
私はその時、立派なジャスミンだったのだけど、一報を聞いてから自分でも驚くほどに取り乱した。
彼は、なかなかにセンシティブで、革新的なアイドルだった。
少しだけ、閉鎖的とも言える韓国の芸能界で
1番最初に事務所公認で熱愛発表をした子だった。
1番最初にLGBTQを公的に支持する発言をした子だった。
何を言ってもあとの祭りになってしまう、
そんな今日という日が恐ろしいのだけど、私は内心
「いつアイドルを辞めてもおかしくない子だな」
と思っていた。
むしろ、大変だったらアイドル辞めればいいじゃん、とも思っていた。
私は自分のアイドルオタクのいち面を「パトロンタイプ」
だと自分で評している。
「芸能人」という、一芸に秀でた人々を応援するにあたって、
私はただお金を出してあげるだけ。あとは自由にしなさい。
僕のお金で女を抱くのもいい。酒を浴びるように飲むのもいい。夜通しダンスを踊って、朝方にボロ雑巾のように眠るような男でもいい。
ただ、美しい君の蝶のように舞うステージを、一年に一度見しておくれ。
みたいな。気持ち悪いな、わたし。
でも本当にそうなのだ。オスカー・ワイルドのような世界観でアイドルを応援していたい。もちろんこれは私のタイプ、なだけの話。
たとえこの思考が理解できなくとも、これからも優しくしてほしい。
味噌ラーメンが好きでも塩ラーメンが好きでも、ラーメン好きなら仲良くなる世の中がいい。
話がソレた。
彼のことを書こうと思ったのだけどやめようかな。
まだ心の準備ができていないなんて、自分でも驚きだ。
頭のなかでは、こういうことを書きたい。
とか、こういう風に思ってる。
とかあるのに、うまく切り出せない。
ただ、言いたいことだけを言うのなら。
心血注いでパトロンのごとく自由に愛した推しがある日
「疲れた、お疲れ様と言ってほしい。」
という遺書だけを残し。
ランボルギーニを乗り回していた君とは思えないような安宿の一室で。
報道によると、「練炭自殺特有の苦しんだあとと、部屋のあちこちに吐瀉物」
という、状態で。
20代後半という若さで自ら命を経った時。
私たちファンは何を思えばいいのだろうか。
匿名のインターネットという世界で、
彼に投げかけた言葉は適切だったのか。
彼が見ていなくても、彼をキャスティングするメディアが目に触れたり、彼の友人や、家族が見たり。メンバーが見たりするSNSで、彼に投げかけられた言葉は必ずしも、遊び半分で傷つける言葉がなかったのだろうか。
正解はひとつもわからない。
何が彼の心にひっかかってしまったのかなんて、彼自身もわからなかったかもしれない。
けれど、
私がなによりショックだったのは
「姉と母を幸せにしたいと思ってアイドルになった。この前夜中に不安になって、姉と母を起こして『今幸せか?』と聞いたら、2人は『幸せだ』と言うんだ。でも僕は幸せじゃなくて、『どうして2人は幸せなのに、僕は幸せではないの?』と泣いてしまった。来年は、そんな風に思わない年にしたいな」
という、2016年のインタビュー記事だ。
アイドル、ってなんだろう。
彼らに笑顔にさせてもらっている私たちは、
彼らを笑顔にさせているのだろうか。
どうして、幸せじゃなくなってしまったのだろう。
韓国のアイドルは、とくに有名税の高額納税者が多すぎると思う。
確実に過剰納税だ。
わたしたちは、
「アイドルなんだから」
といって、彼らから何を奪い、何を押し付けてしまっているのだろう。
推しが死んだら悲しいから、何もかも許してやれ
と言いたいわけじゃない。
私はそういう経験があるから、悟っているのよ
といった主張に思われてしまったら、それはそれで仕方がないと思う。
ただ、何が言いたいかというと。
言いたいことに「結論」なんてなかった……。
書いてみてわかったのは、状況を整理したかっただけ。
この、twitterやfacebook、ひいてはtik tokなど、
便利なSNSが普及する世の中であえてブログを開設したにあたって。
大好きなアイドルの話を少しでもインターネットにあげるのであれば
早めに君の話をしないと。と、思っただけの拙文なのである。
(ここまで読んでくださった方がいたら、大変申し訳無い)
20111124 SWC in Osaka - JONGHYUN '僕は君に戀をする'
「メインボーカル」というありきたりな役割では表せないくらいの歌唱力を持った君
40代になった君が、Blue Note Tokyoでアコースティックライブをする
そんな将来があると信じていた2017年の12月17日に捧げよう。
こんなにも素敵な歌をたくさん歌ってきたのに、
12月18日からの君は、死んだ時のことばかり語り継がれるのだ。
それだけは、私は君に怒っているよ。
あなたの印象が、「自殺した韓国アイドル」
として、実力以上に華美に紹介される。それが一番、歯がゆい思い。
さあ、芝居がかった記事はこれで終わりにして。
私も結局その「自殺した韓国アイドル」に加担してしまった懺悔をし、
そろそろ御暇しようと思う。